正当な理由は明治時代のモダンな女子学生の制服を現代までその伝統を受け継いでいるという事が由来ですが、現代の卒業式で袴が定番化した本当の理由は、明治の伝統文化を継承しているという理由ではなく1980年代の「アイドルブーム」と「着物業界のビジネス戦略」です。
先生だけが地味に火種を残していた :制服がセーラー服やブレザーに変わった後、生徒は袴を着なくなりましたが、女子校の先生など「教える側の女性」だけは、卒業式の厳かな正装として袴を着続けていました。これで完全に風化せず、細い糸で文化が繋がります。
南野陽子の『はいからさんが通る』で大爆発 :決定打となったのは1987年、トップアイドルだった南野陽子さん主演の実写映画『はいからさんが通る』です。袴に大きなリボンとブーツを合わせた姿があまりに可愛らしく、当時の女子大生たちの間で「卒業式であれを着たい!」と熱狂的な憧れが生まれました。
業界の「第二の成人式を作れ」大作戦 :このブームを見逃さなかったのが貸衣装業界や大学の生協です。「成人式で振袖を着せたあと、卒業式で袴をセットで貸し出せば巨大なビジネスになる」と目をつけ、一気にパッケージ化して宣伝しました。バレンタインのチョコと同じ構図です。
「人生最後」という最強の限定感 学生側にとっても完璧な条件が揃っていました。
・成人式で振袖はすでに着たので、別の特別な格好がしたい
・スーツだと就活の延長のようで地味すぎる
・社会人や既婚になると着る機会が二度とない
つまり、「明治の歴史」という立派な建前に、「南野陽子ブーム」と「業界の商戦」、そして「学生最後にしかできない最高の晴れ舞台を楽しみたい」という本音がガッチリ噛み合って、今の文化が出来上がりました。